<君に届け>今を生きるすべての人へ 心に響く感動の青春ストーリー
11月28日16時1分配信 毎日新聞
ちょっと陰気な女子高生が、あこがれの男子や周囲の友だちによって心を開いていく姿を描いた椎名軽穂さんの少女マンガ(「別冊マーガレット」連載)がアニメ化された。「デスノート」や「カイジ」など数々の話題作が放送された日本テレビ系深夜のアニメ枠で、新たな魅力を持った感動の青春ストーリーが登場した。【立山夏行】
■750万部発行の人気マンガ
「君に届け」のヒロインは、長い黒髪と青白い肌から「貞子」とあだ名され、「目を合わすとたたられる」といううわさで周りから敬遠されていた女子高生の黒沼爽子(くろぬま・さわこ)。爽子は、実は人の役に立つのが大好きで、純粋で明るい性格の感動屋なのだが、“空気を読んで”あまり人とかかわらず過ごしていた。
高校に入学し、クラスの人気者・風早翔太が、うわさにとらわれることなく、爽子と接してくれるようになり、少しずつ前向きになっていく姿を描いている。コミックス(1~9巻)は累計約750万部を発行、下川香苗さんの小説版も6冊で47万部を発行するヒットを記録。マンガガイド本「このマンガがすごい!2008」(宝島社)のオンナ編1位に選ばれ、第32回講談社漫画賞の少女部門を受賞している。
■優しい仲間たち
「君に届け」の見どころは、いつもひたむきで一生懸命な爽子を、温かく見守る友人たちだ。さわやかな笑顔で誰からも好かれる風早、姉御肌で義理と人情に厚い吉田千鶴、冷静沈着なツッコミ役で美にうるさい矢野あやね、無口なスポーツマンで風早の親友、真田龍ら、個性的だがとても優しいクラスメートに囲まれ、爽子は「貞子」から少しずつ抜け出していく。
そして、爽子と風早の恋模様ももう一つの見どころだ。出会ったときに見た爽子の笑顔に心引かれる風早と、爽子も風早への思いがあこがれから恋へと変わっていくが、自分に自信を持てずに思いを伝えられない……というもどかしい関係が続いていく。
■「アニメの底力を」
これまでに「NANA」や「カイジ」、「デスノート」などセンセーショナルな展開や異色の設定の作品を手がけてきた日本テレビの中谷敏夫プロデューサーは、「君に届け」の王道の青春物語を真正面から描き、今を生きるすべての人を応援したいという気持ちでアニメ化を決めたという。中谷プロデューサーは「不況でアニメの本数も激減しており、今まで以上に作品に込められたメッセージ性が大切になってきている。主人公がさまざまな出来事を通じて自分をさらけ出し、自己探求を通じて成長していくという意味では今まで手がけてきた作品と変わらない」と語る。
「アニメの底力を見せたかった」という中谷プロデューサーは、「攻殻機動隊」の「プロダクションI・G」に制作を依頼した。少女マンガは初挑戦というスタッフに、企画概要やあらすじ、各キャラクターへの椎名さんのコメントなどを書き込んだ約30ページの「マル秘ノート」を配布し、作品に対する共通認識を持とうと工夫したという。また、作品のモデルとなった北海道へのロケハンを行い、物語の重要なシーンとなる初もうでの神社や波止場などを取材するなど、1年以上をかけて準備をして、じっくりと取り組んだ。
■音楽にも注目
キャストは、爽子役に「地獄少女」で閻魔あいを演じた能登麻美子さんを起用、風早役の浪川大輔さんや千鶴役の三瓶由布子さんら実力派を配した。能登さんは、通常のせりふに加え、3頭身でのギャグシーン、モノローグと細かく声色を使い分けている。音楽は、「アイシテル~海容~」や「神様、もう少しだけ」「あすなろ白書」など人気ドラマの音楽を手がけているユニット「S.E.N.S.」が、爽子や風早の揺れ動く気持ちを見事に表現している。主題歌は、原作のファンというCharaさんが担当。作品への強い思いを書き下ろした。
中谷プロデューサーは「アニメを見てポジティブな感情を持ってもらえたら」と語る。爽子の周りで巻き起こる優しいドラマに今後も目が離せない。
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